県内外で取り組まれている、地域福祉の興味深い取り組みを取材しています。ヒントになりそうな知恵と実践が満載です。
女子も男子も調理でわいわい 高取町社協
2026-01-29
カテゴリ:社協活動,居場所,生活支援,まちづくり
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女子も男子も調理でわいわい
高取町社協
調理室で「女子会」!
2025年12月4日のことでした。
高取町リベルテホール・中央公民館の2階にある、調理室のホワイトボードに、
「女子会」
と大きく書かれたポスターが張り出されました。
町社会福祉協議会が初主催する会で、
町内の高齢女性らに、お昼ご飯の調理と実食を楽しんでもらおうという企画です。
参加者は8人。町社協が、月2回実施している「お買い物ツアー」の利用者を誘いました。
ツアーは、車の運転や外出に不安を感じる人たちをボランティア運転の車で送迎しています。
近隣のスーパーなどでの買い物や行き帰りの交流をと、2018年から続いているそうです。
女子会はそのご縁を活かし、みんなでお昼ご飯をつくって食べて、カラオケも楽しんじゃおう!
というアイデアでした。
もう一品、肉じゃがも作ります。
「料理は最初薄味で。その方が、あとから味を修正できますからね」
「餃子は食べながら焼いた方がおいしいよ。肉じゃがは皆、だいたいわかってるでしょうから、適当に」
時々中村さんの声が飛ぶ中、4グループに分かれた8人はマイペースでお料理です。
「玉ねぎはいつ切るの?」「こんにゃくはゆがくの?」
と質問が飛んだかと思うと、
「私、写真館で写真撮ってもらおうと思てんの」
「うちの旦那、結婚するまでどんなに優しかったか」
と打ち明け話もちらほら。どのグループも笑い声が絶えません。
そんな様子を見ながら、中村さんは言います。
「色合い、味、材料の値段などをどうするか。料理は総合的なもの。達成感があるでしょう」
「息子の嫁に家のことを任せて引退、という人もいるけど、いろんな趣味を持った方がいい。70歳超えてからが自分の人生やから」
1時間半ほどで餃子と肉じゃがが完成しました。
その後の食事も、おしゃべりをしながら和気あいあいです。
できあがった餃子がけっこう多くて、その場で食べきれなかったのはご愛敬でしょう。
思い出を問わず語りに
片付けを始めるまでの合間、参加者の一人が部屋の外にあるソファで、ひと休みされていました。
筆者が何気なく隣に座ると、問わず語りに思い出話を聞かせてくれました。
75歳の時に夫と死別し、88歳の今まで一人で暮らしてきたこと。
元は軟式テニスの選手だったのだけれど、高校でバレーボールに転じて実業団に入ったこと。
孫がヨットの大会で好成績を収め、副賞のメダルを送ってきてくれたこと……
料理の最中は少し表情が硬いように見えたのですが、おいしいもので気持ちがほぐれたのでしょうか。
柔らかな笑顔で楽しそうに話してくれました。
見知らぬ人とも何気なく打ち解けられるのですから、「女子会」は大成功だったようです。
きっかけはメンズの料理
実はこの「女子会」、昨年の「メンズ料理教室」をきっかけに生まれた企画でした。
町社協の宮本美紀子事務局長と、食品衛生責任者でもある菱垣真澄・地域福祉課主任によると、
ことの流れはこんな具合でした。
きっかけは、自分らしい生き方を模索している町内の若い男性が
「パン屋さんになりたい」
という思いを語ってくれたことだそうです。
その思いを少しでも前に進められないか。
「パンをつくる体験ができたらいいかも」「いきなりパンは無理でも、サンドイッチならできるよね」
それじゃあ、みんなでサンドイッチを作ってみようか。
話は一気に盛り上がり、「メンズ料理教室」を開くことに。
女子会より半年ほど前のことでした。
思い立ったが吉日といいますが、菱垣さんら町社協事務局はあっという間に準備を始めます。
6月初旬ごろにはチラシを配るなどしてPRし、7月9日には開催です。
この時、講師をお願いしたのが、女子会の指導にもあたった中村さんでした。
町社協がふだん気にかけている男性たちに声をかけると、18~55歳の7人が参加を申し込んでくれました。
メニューはサンドイッチと焼きそばパン。
作って食べて無料、途中の出入りは自由と、設定は少し緩めです。
具がパンからはみ出すほどの「ジャンボサンド」をつくった人もいたと言います。
「調理に包丁を使うので、けがをしないか、気が気でありませんでした」
と菱垣さんらは振り返ります。
でも、結果はみんな満足の上首尾でした。
「人を集めるのは、やっぱり食べ物やな」
という中村さんの言葉も励みになりました。
「次は女子会!」
という思いがわきあがったのも当然のことと言えました。
同じペースで寄り添って
同じペースで寄り添って
よその人との接触が薄くなりがちな人にも「参加したい」と言ってもらえるよう、
町社協のみなさんは日頃の環境・関係づくりを重ねています。
企画の中にも、参加者の「気持ちのハードル」を下げる、さりげない気配りがこめられていました。
「メンズ料理教室」にあたって、講師やお手伝いのボランティアに町社協が手渡した
「ご協力のお願い」には、こんなことが書かれています。
「参加することに意義がある!をモットーに!」
「″自由に楽しんでもらう″ということを目的とし、もし何か失敗しても、大きな目で見てあげください」
「一つ一つの動作がゆっくりかも知れませんが、同じペースで寄り添ってのご指導をお願いいたします」
「お願い」はこんなふうに結ばれていました。
「また次の機会を作りたいと思っています。次も参加したいと思っていただけるように、先生方にもご協力いただければ本当に幸いです」
たかが料理、されど料理。
さて、菱垣さん、次はどんな企画ですか?
(奈良県社会福祉協議会地域福祉課 小瀧ちひろ)
感謝:「メンズ料理教室」の写真は高取町社会福祉協議会にご提供いただきました。







