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県内外で取り組まれている、地域福祉の興味深い取り組みを取材しています。ヒントになりそうな知恵と実践が満載です。

細い縁たぐりシニア就労を応援 「よりあい屋」奮闘記

2025-12-09
カテゴリ:住民活動,高齢,居場所,生活支援,SNS,まちづくり
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袋いっぱいの包帯を次々に伸ばしていきます

「ひと手間」の仕事なごやかに


広陵町南部の田園にある特別養護老人ホーム「おきなの杜」。


玄関を入ってすぐの会議室に、近隣の高齢者6人が集まりました。


11月27日、木曜日のお昼下がりのことです。


6人は大きなポリ袋を机の上でひっくり返し、大量に詰められていた筒状のネット包帯を出し散らします。


包帯は製造機から取り出された時のまま、しわが寄り裏返った状態なので、


手作業で一つひとつ表向きにしてしわを伸ばす、ひと手間が必要なのです。

包帯を裏返すスピードも人それぞれ。西岡さんは「隣の人が早くてもあせらないで」とアドバイスします
6人ともポリ手袋を着けて作業を進めます。

黙々と、ではありません。


「焼酎のお湯割りにレモンを入れるとうまいんや!」


と男性の一人が話すと、


「あははは」と女性たちの楽しそうな笑い声が響きます。


時には


「最近、変な電話がかかってきてん」


「それ、危ない。その電話番号、ここでブロックしてしまお」


「今すぐ返事ください、とかいう売り込みには答えたらあかんよ」


といった情報交換が始まることもあるといいます。

西岡亜紀子さん

歩合制で2時間半


この仕事を取り仕切っているのは、

大和高田市の主婦、西岡亜紀子さんが代表をつとめる

シニア就労支援団体「よりあい屋」です。


企業から切り分けられた作業を引き受け、地域の高齢者の方々に請け負ってもらいます。


登録中の働き手は15人。


包帯を整えるのを始め、カプセルトイの景品封入、靴下を売り場のディスプレイに吊り下げるフックの取り付けなど、軽作業が中心です。


包帯の場合で1個当たり70銭ですから、決して高額賃金ではありません。


でも完全歩合制なので、ノルマに追われることなくそれぞれのペースで仕事ができます。


西岡さんは

「ゆくゆくは、年金保険料とか税金の足しになるくらいの金額はお渡しできるようにしたい」

と話します。

作業時間は休憩のティータイムをはさんで午後1時から3時半ごろまで。


毎週木曜は「おきなの杜」で、


月、水、金曜には近鉄大和高田駅に近い大和高田市中心部のスナックを借りています。


「昼間は営業しないから使っていいよ」

と、オーナーが協力してくれたのだそうです。



仕事やめた母の不調きっかけに


西岡さんが「よりあい屋」を始めたきっかけは2023年の夏でした。


35年間飲食店を切り盛りしていた70代のお母さんが

仕事をやめたとたん、心身の不調を訴え始めたのです。


年齢を考えての引退だったのに、

社会との接点がなくなったために、生きがいを失ってふさぎ込んでしまったのだといいます。


病院に通いましたが、症状がよくなる様子は見られませんでした。


通院に付き添った西岡さんは病院のロビーで、

お母さんと同じような悩みを抱える高齢者に何人も出会いました。



根気よく居場所とやりがい探して


「こんな人たちに、居場所半分、やりがい半分の場所を作ってあげられないかな。ちょっとでも仕事があったらいいのに…」


そうは思ったものの、西岡さんには起業の経験がありませんでした。


「なにもわからない。わからなすぎて、とにかく市役所に電話をかけてみたんです」


すると、交換手の職員が市商工会議所を紹介してくれました。


当たって砕けろ。


さっそく会議所に電話です。


「知識も経験もないです。自分で仕事を興すにはどうしたらいいですか」


電話応対してくれた職員さんは

「とりあえずこちらへ来てください」

と言ってくれました。


そして、起業を検討している人向けの創業塾の受講を薦めてくれました。


すると今度は、塾の講師も大阪のネット物販業者を紹介してくれたのです。


西岡さんは根気よく、細い縁の糸を手繰り寄せるようにして、あるべき形を探っていったのでした。



高齢者に無理ない仕事を


西岡さんがそれまでのパートをやめ、

「よりあい屋」を始めたのは2024年春のことでした。


内職になるような仕事を探すのは西岡さんひとりです。


奈良県のホームページにある内職求人情報などを見ては、業者に片っ端から電話していきました。


高齢者に働いてもらうのですから、細かな作業は引き受けられません。


「納期が厳しいものは無理です」


「100個を100%仕上げるのは難しいです」


そう断ったうえで発注元を探しますから、簡単ではありません。


当然断られることが多く、今発注してくれているのは4社だといいます。


それでも、ママ友数人が作業の支援を買って出てくれたのは幸いでした。



「こども食堂のように全国へ」


西岡さんは夢を膨らませます。


「この取り組みがこども食堂みたいに全国に広がって、高齢者がだれでも自由に仕事をできるようになるのが理想です」


「ゆくゆくは、それぞれの得意なことをお仕事につなげられるようにできたらいいな」


「居場所はひとつじゃだめなんです。だれでも気軽に行ける場所が二つ、三つあれば」



ちなみに、西岡さんのお母さんは今、おでん屋さんの仕込みを任されています。


西岡さんのような小規模事業者が集まる、大和高田市内の「居場所」に参加した時、

手伝いを探していた店主から


「お母さん、うちに来てもらえませんか?」


と声をかけられたのだそうです。


古裂の小物あれこれ。飴ちゃん用の小袋もありました

猫グッズや古裂小物に拡大も


西岡さんの活動はこれだけにとどまりません。


保護猫ボランティアをしている関係で、

土曜日には廃材になる靴下の端切れを使って猫用のベッドやおもちゃを

ボランティア仲間や地域の高齢者と作っています。


着物の古裂を使った裁縫を得意とする人もいるので、

茶道具用の袋物や小物入れ、人形など、高級感がある手作り和様作品の

販路を見つけるのも目標のひとつだそうです。


「参加する方々の経験や技術、まだ眠っている可能性を引き出したいんです」


西岡さんにインタビューしていて、その正直さ、無理のない目標の決め方、根気強さに驚きました。


本当に「小さなことからコツコツと」の見本のような方でした。


(奈良県社会福祉協議会地域福祉課 小瀧ちひろ)

★シニア向け就労支援「よりあい屋」
 代表:西岡亜紀子さん
 電話:080-6435-5770

 活動日時と場所 月水金 13時~15時半
         Shining on space HARU(大和高田市神楽104-2)
         木 13時~15時半
         高齢者総合福祉施設 おきなの杜(広陵町南郷84-1)